急増する検閲。それを生むものはなにか


いま日本社会の言論と表現の自由がいかに奪われているか。それはここ10年ほどの検閲事例の多さが物語ります。

それは何が原因でしょうか?日本社会に根強く残る差別や政治的腐敗。その本性を知るには、より広い時代のパースペクティヴが必要に思います。

日本が帝国主義だった時代から、民主主義を掲げた時代、そして政治が機能不全に陥った時代。それぞれの時代の検閲事例をつなぐことで、見えてくるものがあります。


★=社会の出来事

838小野篁の漢詩『西道謡』が嵯峨上皇に問題視され、隠岐国に流罪。記録上最初の検閲事件で、朝廷と帝の風刺が原因とされる
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1868★大政奉還
1869出版条例制定
1872★明治政府が琉球藩を設置。「琉球処分」
1874★台湾出兵
1875讒謗律制定、天皇・皇族、官吏などへの名誉棄損に対する処罰を規定。新聞紙条例制定
1880集会条例、不敬罪・大逆罪制定
1882.1『團團珍聞』、四方拝(宮中儀式)への風刺で在庫没収・罰金に
1889女性の「裸体画」の出版物・印刷が発行禁止に
1889.2『頓智協会雑誌』(発行人・宮武外骨、画・安達吟光)、帝国憲法発布と明治天皇の風刺で不敬罪に
1890集会及政社法制定
1894★日清戦争
1892久米邦武筆禍事件。神道に関する論文が批判を受け撤回、帝国大学教授を辞職
1893出版法制定
1901腰巻き事件。白馬会第六回展で、黒田清輝の《裸体婦人像》、ラファエル・コランの《オデオン座天井画下絵》、湯浅一郎の《画室》が警察から問題視され、布で覆う展示に。その後も同様事件多発
1904★日露戦争
1908猥褻文書の取り締まりで、春画16万部ほか大量押収、100人が検挙
1909新聞紙法を制定。1897年の新聞紙条例改正で廃止になった制限規定が復活
1909.8『東京パック』、北沢楽天の漫画のキャプションにおける血税(徴兵)批判で発売禁止に
1910大逆事件。幸徳秋水ら社会主義者を大規模に逮捕・処刑 ★日韓併合
1910.1『東京パック』、拾円札の原寸写真掲載で発売停止に
1918白虹事件。大阪朝日新聞の不買運動で社長退陣、編集局幹部が辞職 ★シベリア出兵
1920森戸事件。森戸辰男東京帝国大助教授の論文が問題視され有罪判決
1921第一次大本事件。不敬罪と新聞紙法違反で大本教を弾圧
1923.9★関東大震災
1925.4★治安維持法公布
1928.6★緊急勅令で治安維持法改正。最高刑を死刑に
1931.9★満州事変(柳条湖事件)
1932柳瀬正夢、治安維持法違反で特高により逮捕。拷問も
1933.2小林多喜二、検挙されて警視庁築地署で虐殺される
1933.4滝川事件。鳩山一郎文相が滝川幸辰京都帝国大学教授の辞職を要求
1935.9天皇機関説事件。美濃部達吉貴族院議員が辞職
1935.12第二次大本事件。出口王仁三郎ら幹部多数を逮捕。結社禁止とされる
1937.7★盧溝橋事件。日中戦争が本格化
1938.2南京事件を描いた『中央公論』3月号の石川達三「生きてゐる兵隊」発禁
1938.4★国家総動員法公布
1939★ノモンハン事件
1941.12言論出版集会結社等臨時取締法公布 ★真珠湾攻撃。太平洋戦争はじまる
1943.5横浜・泊事件。中央公論社・改造社の社員など大量検挙
1945.8★日本、ポツダム宣言受諾。敗戦による戦争終結
1945.9GHQ、「プレス・コード(日本に与うる編集遵則)」「ラジオ・コード」発表
1945.10治安維持法・治安警察法・思想犯保護観察法など廃止
1946.6亀井文夫監督の映画『日本の悲劇』の昭和天皇の描写が問題視され、GHQにより上映禁止に
1946.10放送ストライキ。NHKで停波ストに入るも政府が放送の国家管理を発動
1950丸木位里・俊の絵本『ピカドン』がGHQにより発売禁止に。原画は押収、紛失
1950★レッドパージ
1951『チャタレー夫人の恋人』性描写で押収・発禁。翻訳者の伊藤整などに有罪判決 ★サンフランシスコ講和条約調印
1952吉田茂内閣、電波監理委員会を廃止して放送の直接免許制を導入
1954.3ビキニ環礁で第五福竜丸などが米軍の水素爆弾実験で「死の灰」を浴びる
1959『悪徳の栄え』事件。性描写を理由に翻訳者・出版者が起訴され、有罪判決
1960.10浅沼稲次郎暗殺事件。演説中の浅沼社会党委員長が右翼少年に刺殺される
1961「風流夢譚」事件。中央公論社の嶋中社長宅に右翼少年が押し入って家政婦を殺害。
右翼攻撃を恐れた中央公論社が『思想の科学』天皇制特集号を廃棄処分にした「思想の科学」事件
1962,11防衛大進学をめぐるテレビドラマRKB毎日放送制作『ひとりっ子』放送中止
1965赤瀬川原平、千円札事件で起訴(67年これを題材にした「表現の不自由展」開催)
日本テレビ『ベトナム海兵大隊戦記』第二部・第三部放送中止
1968TBS『成田24時』政府の圧力で放送中止。その後TBSはテレビ報道部を解体
1971第10回現代日本美術展で、前山忠は反戦旗とともに出品したカンパ箱への東京都美術館の強制撤去に抗議し、作品すべて自主撤去
1972★西山事件。「沖縄密約」漏洩で西山太吉記者を逮捕・起訴
1973札幌テレビ『土曜焦点』北海道電力が内容に抗議してスポンサー降板、番組打ち切り
1980★韓国・光州民衆抗争
1981NHKロッキード事件。『ニュースセンター9時』で三木元首相インタビューなどをカット
1983桐山襲『パルチザン伝説』右翼恫喝により河出書房新社での出版中止
1986大浦信行の版画連作《遠近を抱えて》が富山県立近代美術館「’86富山の美術」展で、県議会議員らの突き上げによる図録の非公開決定。図録焼却 ★チェルノブイリ原発事故
1987貝原浩の鉛筆戯画『アサヒ芸能』に掲載
1988〈秋の嵐〉路上行動弾圧、大量検挙。ピーター・バラカン担当テレビ音楽番組打ち切り
NHK、大型間接税に関する世論調査をカットして放送 ★天皇「下血」報道
1989★昭和天皇裕仁死去 ★ベルリンの壁崩壊
1990★長崎市長銃撃事件
1991★湾岸戦争
1993椿発言事件。テレビ朝日の選挙報道をめぐり、同局の椿貞良前報道局長が国会証人喚問
1994川崎市市民ミュージアムで大榎淳の皇族モチーフ作販促物が展示禁止(富士ゼロックス事件)
1995★阪神・淡路大震災 ★オウム真理教による地下鉄サリン事件
1996山下菊二回顧展で〈天皇制シリーズ〉の展示自粛館多数。図録不掲載。『ナヌムの家』上映初日、右翼がスクリーンに消火器噴射。東京ビッグサイト・アトピックサイト展で、沖縄問題と性表現の表現作が展示禁止
1998『南京1937』の上映妨害、スクリーン切りつけ
1999森達也『放送禁止歌』フジテレビで放送。自粛を問う
2000日の出町の二ツ塚(ごみ)処分場に若林奮が自主設置した《緑の森の一角獣座》を東京都は強制撤去。保存のための法廷闘争は実を結ばず
2001.1「日本軍性奴隷制を裁く女性国際戦犯法廷」に関するNHK番組が政治介入により改竄
2001.8船橋市西図書館で司書が無断で、西尾幹二、福田和也、西部邁ら保守系知識人の著作541冊廃棄
★「9・11」。米国「事実上放送禁止」になった曲多数。「テロとの戦い」としてアフガン攻撃
2002★日朝首脳会談で「日朝平壌宣言」採択
2003★イラク戦争
2003.4★東京・杉並区の公園のトイレに「反戦」落書きをした男性が建造物損壊で逮捕、起訴
2004.7朝鮮人強制連行犠牲者の追悼碑「記憶 反省 そして友好」が群馬県の許可を得て設置。横浜美術館で高嶺格《木村さん》がわいせつ理由に上映取り止め。
2004.10本宮ひろ志の漫画『国が燃える』、南京大虐殺描写への右翼抗議により大幅な削除・修正。『週刊ヤングジャンプ』一時休載
2005★『マンガ嫌韓流』ミリオンセラー、嫌韓流はじまる
2006★竹中平蔵総務相が設置した「通信・放送の在り方に関する懇談会」最終報告で、NHK・FMは「公共放送の役割を終えた」とし、2011年までに民間に開放すべきとした
2007テレビアニメ『School Days』『ひぐらしのなく頃に 解』が、当時起こった少女惨殺事件を連想させるとの理由で地上波放送中止
2008.1岩手県奥州市が作成した蘇民祭のポスターがJR東日本より「不快感を与える」と掲示を拒否。いわゆる裸祭りを問題視したもの
2008.2国内発行済のロバート・メイプルソープ写真集が税関で没収された事件について、最高裁が史上初めて下級審での猥褻物の判断を覆して没収処分を取り消し
2008.3ドキュメンタリー映画『靖国 YASUKUNI』が右翼団体などの抗議で相次いで上映中止
2008.7アジアトップギャラリーホテルアートフェア(ニューオータニホテル)に出品予定だった李鍾祥の独島(竹島)の絵画10点が、右翼からの脅迫などもあって主催者の意向で取り止めに
2009.4沖縄県立博物館・美術館の「アトミックサンシャインの中へin沖縄」展で大浦信行《遠近を抱えて》が展示不許可。「沖縄県立美術館検閲抗議の会」が発足し、抗議
2009.7中学生のための「慰安婦」パネル展、在特会(在日特権を許さない市民の会)の妨害で三鷹市が施設利用保留。市民の抗議で開催
2009.12★在特会による京都朝鮮学校襲撃事件
2010.4愛知県美術館「小川芋銭と珊瑚(さんご)会の画家たち」展で展示された小杉未醒《鮮人》というタイトルに対し、差別的だという抗議。それを受けてタイトル変更を検討したところ、保守系団体から反発
2010.5神戸市ファッション美術館の「ファッション奇譚」展で岡本光博《バッタもん》がルイ・ヴィトンから抗議を受けた神戸市の指示で、作家に無断で展示中に撤去。展覧会パンフレットも回収・破棄され、ウェブサイトやポスターが再作成、作品の存在が消去
2011横尾忠則がデザインした加古川線のラッピング電車案「ターザンの雄叫び」を、JR西日本が災害に配慮した自主規制で採用拒否
2011.3★「3・11」東日本大震災・福島第一原発事故。東京・目黒区美術「原爆展」が原発事故に配慮し延期、予算不足を理由に中止。アニメ・SFなどのTV番組での災害場面の自粛
2011.5渋谷駅において、第五福竜丸被曝事件をモチーフに含む岡本太郎の 壁画《明日の神話》に、Chim↑Pomが福島第一原発事故の「置き絵」を追加するビデオを発表。軽犯罪法違反の容疑で事情聴取・書類送検される。のちに不起訴に
2011.5福岡で開催されたサウンドデモ、DJが荷台から降ろされる。デモと DJの表現の自由を争って損害賠償を弁護士なしの本人訴訟で提訴し、勝訴
2011.7「SHIBU Culture~デパートdeサブカル」展(西武百貨店渋谷店・美術画廊)が、「内容が百貨店にそぐわない」などの苦情を理由に中止
2011.8★韓流ドラマを多く放映するフジテレビに抗議デモ
2011.3★「3・11」東日本大震災・東京電力福島第一原発事故
東京・目黒区美術館「原爆展」が原発事故に配慮し延期、予算不足を理由に中止。アニメ・SFなどのTV番組での災害場面の自粛
2011.8★韓流ドラマを多く放映するフジテレビに抗議デモ
2012藤沢市民まつりで、小田急江ノ島線湘南台駅構内に設置の北川純によるバルーンアートが「卑わい」との市民の苦情で撤去
2012.3★ロート製薬攻撃事件 ロート製薬が韓国人女性俳優のキム・テヒをCMに起用したことをめぐり、在特会らが抗議や脅迫しを行って、4人が起訴され有罪に
2012-13★のちにヘイト・スピーチ(憎悪言説)と言われる差別・迫害のデモが各地ではじまる
2012.4大阪のクラブなどで、深夜以降も客を踊らせたとして風営法違反の摘発が続く。逮捕されたクラブ経営者が以後4年越しで裁判を闘い、勝訴
2012.5新宿ニコンサロンが安世鴻「慰安婦」写真展中止通告。安が提訴し、東京地裁が展覧会開催を命じる仮処分。大阪巡回展は不開催。安が2015年勝訴
2012.8東京都美術館「第18回JAALA国際交流展」で「慰安婦」をテーマにしたキム・ソギョン&キム・ウンソン「平和の少女像」、パク・ヨンビン「Comfort Women!」が展示撤去。11月、メディア・アーティストの大榎淳らが東京都美術館の壁に作品映像を投影する抗議行動
2012.11週刊誌2誌に掲載されたジェイミー・マッカートニーの《T h e Great Wall of Vagina》につき、警視庁保安部が猥褻物図画陳列罪などにあたる恐れがあるとして両誌編集部に口頭で警告
2012.12★第2次安倍政権発足
2013埼玉県平和資料館は改装時に加害展示を削除。県議会で「自虐的」との指摘あり
2013島根県出雲町の公園や遊園地に設置された、ダビデ像などを模した公共彫刻が市民のクレームを受けたことが報道。過剰な批判論調が相次いだ
2013.1森美術館にて開催された会田誠の個展「天才でごめんなさい」の〈犬シリーズ〉について、性暴力的表現、障がい者差別的表現などの理由で森美術館に撤去を求める抗議行動が起こる。ツイッターの書き込みの無断引用が著作権侵害と批判
2013.2写真家のレスリー・キーと画廊経営者らが猥褻物頒布罪で警視庁に検挙される
2013.2ニューヨーク近代美術館(MoMA)の「TOKYO 1955-1970:新しい前衛」展に出品の横尾忠則の「朝日」を用いた複数作品に対し、在米韓国人の市民団体が軍国主義の象徴の「旭日旗」だとして抗議
2013.4福井市文化施設AOSSAのピースアート展で河合良信の憲法9条主題作が一時撤去
2013.7★第23回参議院選挙で自民党が大勝し衆参「ねじれ」解消、民主党は大敗
2013.8長野県長野市にある松代大本営跡の説明板の、朝鮮人の強制連行に関わる説明がテープで隠された。翌年報道される
2013.8松江市教育委員会が漫画『はだしのゲン』を全市立小中学校に閉架措置とするよう要請(のち撤回)
2013.10千葉県立中央博物館「音の風景」展で永幡幸司出品作の説明文が同意なしに検閲・修正
2013.11北海道猿払村に設置予定だった韓国・朝鮮人の強制動員犠牲者追悼碑が、村への抗議や日本政府の難色から延期に
2013.11脱原発弁護団全国連絡会議は、反原発・脱原発などの33市民団体に対し、9月上旬から11月上旬にかけて253万通ものメールによるサイバー攻撃がなされたと発表
2013.12★特定秘密保護法成立
2014.1★数研出版の高校教科書から「慰安婦」など記述を削除
2014.2東京都美術館「現代日本彫刻作家展」で中垣克久の「時代(ルビ:とき)の肖像」が「政治的」と現政権の右傾化批判メッセージの一部が削除
2014.2東京都内の複数の公立図書館が所蔵する『アンネの日記』とその関連図書が破られる事件が発生し、当時36歳の男が逮捕。犯行当時心神喪失の状態にあったとして不起訴に
2014.3逗子市、逗子海水浴場での飲酒・音楽・タトゥー・入れ墨を全面禁止とする条例を施行
2014.3大阪府泉佐野市教委が漫画『はだしのゲン』を市立小中学校の図書室から回収
2014.4奈良県天理市にある旧海軍航空隊大和基地(柳本基地)の市の説明板が撤去。朝鮮人女性を強制連行して使役させた慰安所の記述があった
2014.5『週刊ビックコミックスピリッツ』の漫画『美味しんぼ』「福島の真実」が抗議で休載
2014.5京都大学医学部史料館で、731部隊の石井四郎部隊長らの関与解説パネル撤去
2014.5産経新聞が広島大学での日本軍「慰安婦」を扱った授業「映画と演劇」(映画『終わらない戦争』〈金東元監督〉を上映)に対し「韓国の政治的主張の発信基地に成り下がった」と批判。これに対し大学教職員組合や日本科学者会議広島支部幹事会が抗議
2014.7ろくでなし子、自身の女性器を3Dプリント用データにし送付した行為で1度目の逮捕
2014.7群馬県は2004年に設置許可した朝鮮人強制連行犠牲者追悼碑「記憶 反省 そして友好」の設置更新許可申請を不許可処分とし、撤去要求。11月、市民らが取り消し訴訟
2014.7俳句「梅雨空に『九条守れ』の女性デモ」が埼玉県さいたま市大宮区三橋公民館月報号で掲載を拒否。2015年6月、作者が提訴。2018年12月、最高裁で原告勝訴
2014.7非実在も対象とすることで漫画家らの反対が多かった、単純所持禁止を盛り込んだ児童ポルノ禁止法改定法が施行
2014.8愛知県美術館「これからの写真展」で鷹野隆大《おれと》の一部がわいせつ理由で覆い隠される
2014.12ろくでなし子とアダルトショップ経営者が店内で女性器を石膏で型取りしたものに着彩・装飾した作品を展示したとしてわいせつ物公然陳列の疑いで逮捕
2014.12福岡県那珂川町、人権啓発イベントで町立中学校が上演予定の朗読劇が中止
2014.12★第47回衆議院選挙 自民291議席で圧勝 民主・海江田代表が辞任 ★「慰安婦」報道検証記事で朝日新聞批判強まる。同紙元記者植村隆と家族への脅迫始まる
2015.1「表現の不自由展〜消されたものたち」都内で開催。検閲作品を集めた展覧会
2015.1イスラム教を冒涜した漫画で、パリでシャルリー・エブド襲撃事件が発生
2015.2国立新美術館での2014年度五美大卒業制作展で作品撤去をめぐり作者が不満を表明
2015.3中学生のための「慰安婦」パネル展、新座市教育委員会が施設使用拒否
2015.3石川県金沢市の市庁舎前広場で計画された護憲集会を市が不許可
2015.3『マンガボックス』(DeNA)で連載の『境界のないセカイ』(幾夜大黒堂)がLGBTへの配慮との講談社の自主判断で単行本の発売中止となり、連載も中止に。LGBT団体のレインボー・アクションは作品に問題なしと声明
2015.4大阪国際平和センター(ピースおおさか)が運営する戦争博物館で、府議らのクレームにより旧日本軍の加害行為を示す写真パネル数10点撤去。のち廃棄
2015.6アイドルグループ「制服向上委員会」が自民党批判の曲を歌ったことで、神奈川県大和市が市民団体のイベント後援を開催後に取り消し
2015.6★自民党勉強会で作家・百田尚樹が沖縄地元二紙は「つぶさなあかん」と発言
2015.6学者33名で構成される「学問の自由を考える会」、文科省が国立大学に対して入学式と卒業式での国旗掲揚と国歌斉唱を要請するとした方針につき、大学の自由な研究を訴えた要望書を文科省に提出
2015.6ミュージシャンら、多くの議論を呼んだダンス規制法(風営法改正条例)が施行
2015.7女性自衛官が「慰安婦」を性奴隷とする国連報告書をまとめたクマラスワミと同席した感想を書いたブログを在ベルギー日本大使館HPで公開。政府は「性奴隷」表現撤回要求。一部削除
2015.7労組主催「駅前文化祭」、兵庫県姫路市が安倍政権批判ビラ掲示などを理由に中止
2015.7権堂商店街七夕祭りで、「戦争原発バラマキの愚作」等の垂れ幕7本が長野市の要請で撤去
2015.7東京都現代美術館「おとなもこどもも考える ここはだれの場所?」に出品された会田家名義の《檄》と会田誠の《国際会議で演説をする日本の総理大臣と名乗る男のビデオ》への撤去要請。東京都現代美術館への批判が集まり、展示継続
2015.8岩手大学が教職員組合に安保法案反対の看板撤去を要請
2015.8川内原発再稼働反対集会、鹿児島県が久見崎海岸の使用を不許可
2015.8松本駅自由通路に「平和のための信州・戦争展中信地区実行委員会」が設置した戦争反対を訴えるパネル展示について、松本市が「政治性が濃い」などを理由に使用許可を取り消し
2015.8辺野古新基地建設の現場や世界の紛争地帯で撮影された報道写真を展示する「フォトジャーナリズム展三重2015」の後援を三重県県教育委員会が取り消し
2015.8JR御徒町駅構内の男子トイレに安倍首相を批判する落書きが見つかり、警視庁上野署が器物損壊容疑で捜査
2015.8Chim↑Pom「耐え難きを耐え→忍び難きを忍ぶ」展を開催。過去の自主規制や検閲を告白
2015.8大阪の彫師、医師法違反で起訴。タトゥーの表現の自由を掲げて闘い、地裁で敗訴するも2018年11月高裁で逆転無罪
2015.9★安全保障関連法強行採決
2015.9★自民党ポスターの首相顔写真の落書きで、警視庁が町田市の男性を器物損壊容疑で逮捕
安保関連法に関するアンケート調査に、外部から「不適切」などとクレームがついて発表中止
2015.10「安全保障関連法に反対する学者の会」が開催予定だったシンポジウムに対し、立教大学が会場貸し出しを拒否
2015.10放送大学の単位認定試験問題で、大学側が「現政権への批判が書かれていて不適切」として、試験後に学内サイトで問題を公開する際、該当部分を削除
2015.10「MARUZEN&ジュンク堂書店 渋谷店」が開催していた販売促進フェア「自由と民主主義のための必読書50」が政治的に偏っているとの批判を受け、フェアを中断
2015.10京都造形芸術大学の展覧会「パレ・ド・キョート」展に出演予定だった鳥肌実の出演への非難が集まり出演撤回
2015.10山口県周南市が、市民団体が計画するシンポジウムをめぐりホール使用許可を取り消し。市が「TSUTAYA」と進める図書館建設計画に反対する団体の取り組みを「政治活動」と判断
2015.11北海道博物館の自衛隊基地問題をめぐる常設展に抗議があり、資料一部を撤去・差し替え
2015.11宮城県柴田農林高校社会科学部が、文化祭での発表の一環として生徒を対象に行われた、安保関連法に関するアンケート調査に、外部から「不適切」などとクレームがついて発表中止
2016.1京都市立芸術大学@KCUAでの丹羽良徳のワークショップに対し、プライバシーの尊重と人権感覚が欠如していると批判が寄せられた
2016.2★高市早苗総務大臣、放送法違反を理由にテレビ局に対し電波停止を命令できると答弁
2016.2八島良子の《Value》が2015年度の文化庁メディア芸術祭アート部門で審査委員会推薦作品に選ばれながら、内容が性的な理由から受賞作品展(国立新美術館)で展示拒否
2016.3★愛媛県立の全59高校(特別支援学校、中等教育学校を含む)が校則を変更し、校外での政治的活動に参加する生徒に対し、学校への事前届け出を義務づける
2016.3「マネキンフラッシュモブ」に参加した神奈川県海老名市議に対し、市が禁止命令。裁判で勝訴
2016.3東京都現代美術館「MOT Annual 2016 キセイノセイキ」で小泉明郎作品への改変要請。作家は美術館近隣の画廊・無人島プロダクションで同作品を展示
2016.3広島市現代美術館「ふぞろいなハーモニー」展で、リュー・ディンの《2013年のカール・マルクス》が中国政府の輸出不許可によりブルースクリーンで展示
2016.3★NHK『クローズアップ現代』、TBS『NEWS23』、テレビ朝日『報道ステーション』のメインキャスター(国谷裕子、岸井成格、古舘伊知郎)がそれぞれ番組降板
2016.4熊本地震の直後、女性タレントがSNSに投稿したパンケーキの画像が不謹慎と多くの批判を浴びる(不謹慎狩りの一例)
2016.4鹿児島市主催のヨガ講座講師が、私服で「反核」とプリントされたTシャツやパーカー着用を問題視され、2016年度の契約更新を拒否
2016.5山梨県の北杜市中央図書館が、市が推進する中部横断自動車道の建設に反対する市民団体の隔月発行ニュースの掲示を拒否
2016.6東京の府中市美術館の「燃える東京・多摩 画家・新海覚雄の軌跡」展が「内容が偏っている」と「中止の可能性も含めて再検討」を指示されたと、同館学芸員がネット上で発信
2016.7★第24回参議院選挙 与党が改選議席上回る70議席、憲法改正勢力が3分の2に
2016.8沖縄県東村高江で米軍ヘリパッド建設への抗議活動を取材していた記者を警察が一時拘束
2016.8「平和のための戦争展」、福岡市が後援取り消し
2016.10★アクティブ・ミュージアム『女たちの戦争と平和資料館』」に、「朝日赤報隊」を名乗る者から爆破予告のハガキが届く
2016.11沖縄の米軍新基地建設抗議運動中に、威力業務妨害の疑いで市民4人を逮捕、長期勾留。フリーカメラマン島崎ろでぃーも東京で逮捕され、沖縄に移送されて勾留
2017.1東京MXテレビが沖縄の基地反対闘争を差別的に表現した番組『ニュース女子』を放送
2017.2「慰安婦」問題を扱ったドキュメンタリー『記憶と生きる』、市民からの抗議によりさいたま市教育委員会が後援取り下げ
2017.4群馬県立近代美術館の「群馬の美術2017」で、県立公園群馬の森にある朝鮮人労働者の追悼碑を模した白川昌生の作品「群馬朝鮮人強制連行追悼碑」を同館が開催直前に撤去
2017.4千葉市は、日韓「合意」を批判する展示をしたなどとして、学校法人「千葉朝鮮学園」主催の美術展と芸術発表会への補助金50万円の交付取り消し
2017.6精神科医・香山リカの講演会が、東京・江東区社会福祉協議会が妨害予告受け中止
2017.6京都市美術館、富樫実による野外彫刻《空にかける階段’88-Ⅱ》無断切断・撤去。その後2020年3月のリニューアル会館に伴い再展示されることで合意
2017.6★委員会採決の省略で「共謀罪」法強行採決
2017.10国連特別報告者、日本の報道機関の独立性について、政府の圧力に弱いと指摘
2017.11沖縄で開催されたイチハナリアートフェスティバルで岡本光博《落米のおそれあり》が開催直前に封印(場所を移して、最後の2日間公開)
2017.12BPO(放送倫理・番組向上機構)の放送倫理検証委員会が1月に放送された『ニュース女子』について「重大な放送倫理違反があった」との意見を公表
2018.2朝鮮人追悼碑の不許可は群馬県の「裁量権の逸脱があった」と、前橋地裁が処分取り消し
2018.22018年度五美大卒業制作展で国立新美術館が一部の作品撤去(大橋藍ほか)
2018.3BPOの放送人権委員会が1月に放送された『ニュース女子』について「名誉毀損の人権侵害があった」との勧告を公表
2018.3政府の規制改革推進会議が、放送事業の規制緩和とともに、放送法4条撤廃などを検討していると報道
2018.3福岡市のアートイベント「福岡城まるごとミュージアム」で、美術家・岡本光博の立体作品が題名《ドザえもん》を布や黒塗りで伏せて展示
2018.3前川喜平前文科事務次官の公立中学校での授業に対し、文科省が名古屋市教委に内容確認を要求。2度に渡って合計約30項目に及ぶ質問書を送りつけた
2018.3わいせつ物とは言えない研究書が有害図書指定される事例が2件発生(滋賀県、北海道)し、図書館問題研究会全国委員会等が有害図書指定を問題視する声明を発表
2018.6東京のNTTインターコミュニケーション・センターに出展した映像作家・吉開菜央の映像作品《Grand Bouquet》が、一部黒塗りで公開
2018.6まいんのラノベ『二度目の人生を異世界で』が、戦争犯罪の肯定的設定と作者のヘイトスピーチが批判を受け、アニメ制作中止に。ホビージャパンは小説も出荷停止
2018.2朝鮮人追悼碑の不許可は群馬県の「裁量権の逸脱があった」と、前橋地裁が処分取り消し
2018.8兵庫県芦屋市議会で公明党議員が「図書館の自由宣言」を攻撃し、「市立図書館民営化」を提起
2018.8ヤノベケンジ《サンチャイルド》が福島市の子ども施設前に設置。議論が不十分として批判が集まり、9月に撤去
2018.10福島ビエンナーレ2018で、ヤノベケンジ、開発好明、木下史青、若木くるみらの4作品が出品見送り
2018.10東京都大田区で開催予定の豊田直巳写真展「叫びと囁き フクシマの七年間~尊厳の記録と記憶」で、区側が作品の一部を「政治的」だとして展示から除外するよう要請。区はその後メディアの取材を受け一転容認
2018.10映画『沈黙ー立ち上がる慰安婦』(朴壽南監督)の茅ヶ崎市での上映会に対し市と市教育委員会が後援していることに抗議活動が行われた
2018.10新ひだか町が老朽化を理由に旧シャクシャイン像を北海道・真歌公園(町静内真歌)から撤去。アイヌ民族有志らが再建を計画。町有地使用を求めている
2018.11元朝日新聞記者の植村隆が「慰安婦」報道の記事を「捏造」と報じられたとしてジャーナリストの桜井よしこらに損害賠償などを求めた訴訟で、札幌地裁が請求を棄却。2019年6月東京地裁も棄却判決
2018.12首相官邸が内閣記者会に、官房長官会見での東京新聞・望月衣塑子記者の質問制限を要請
2018.12著作権法改正で違反が非親告化となり、施行(主に海賊版の規制が目的。多くの二次創作は対象外とされた)
2019.1茅ヶ崎市民文化会館の第35回湘南教職員美術展に出品された版画作品に対し、市議が政治的な主張を持つと抗議。市教育委員会が共催を降りたが、作家が自作を取り下げ、再び共催。作品は辺野古がモチーフ
2019.2中東取材を予定していたジャーナリスト常岡浩介に対して外務省が旅券返納命令
2019.6新潟県燕市の文化財指定を受けている国上寺で、ゆかりの偉人5人を半裸で描いた《イケメン官能絵巻》(木村了子)が公開され、市議会等で問題視される
2019.7札幌で選挙演説中の安倍首相に「やめろ」とヤジを放った市民を警察が排除
2019.7『遊☆戯☆王』のキャラを用いたイラストで、マンガ家の高橋和希が「独裁政権」批判と投票への呼びかけをインスタグラムでしたところ、「政治的」と批判を受けた
2019.8あいちトリエンナーレ2019の「表現の不自由展・その後」中止事件。文化庁は補助金中止を決定したが、後に減額交付
2019.8大阪・富田林の映画祭「寺内町シネマプラス」で『オレの心は負けてない』(在日「慰安婦」被害者・宋神道さんの裁判闘争の記録)が上映不可に
2019.9アイヌの伝統儀式「カムイチェプノミ」でのサケ捕獲を理由に警察が関係者を書類送検
2019.10三重県「第69 回伊勢市美術展覧会」は不自由展中止に抗議し制作された、少女像をコラージュした作品(花井利彦《私は誰ですか》)の展示を取りやめた
2019.10「慰安婦」問題を扱ったミキ・デザキ監督の『主戦場』が「第25 回KAWASAKI しんゆり映画祭2019」で主催者が上映中止に。市民らの抗議で最終日のみ上映
2019.10日本芸術文化振興会は、内定していた映画『宮本から君へ』(監督・真利子哲也)への助成金を、出演者の不祥事を理由に取り消すことを決定
2019.11オーストリアのウィーンで開かれている「ジャパン・アンリミテッド」に対し、在オーストリア日本大使館が公認を取り消した。同展は日本との国交一五〇年を記念した芸術祭で、福島原発事故や安倍政権批判などを扱った作品が展示されていた。
2020★全米にBLM運動が広がる。「反動的な」モニュメントの打ち壊しも多く行われ、これは世界各地に拡散
2020アニメ『異種族レビュアーズ』(マンガ:原作・天原、作画・masha)が、異世界の風俗店巡りという内容の問題視により、一部TV局で放送中止に
2020.2国際芸術祭「ひろしまトリエンナーレ」で、事前に作品の出展可否を検討する委員会を設ける方針が明らかに。3月に総合ディレクターが辞任、その後コロナ禍を理由に芸術祭は中止に
2020.4京都・長岡京市で予定されていた精神科医・香山リカの講演会について、市が名義使用の後援申請を不承認
2020.4★新型コロナウイルス感染拡大で政府が「緊急事態宣言」(~5月末・第一次)。感染防止を理由に、首相官邸の記者会見に入場制限。美術館などの文化施設も休館を余儀なくされる
2020.9福島県双葉町に開館の「東日本大震災・原子力災害伝承館」で語り部に「特定の団体」の批判をしないよう規制が課せられる
2020.9日本第一党・愛知県本部の企画展覧会「あいちトリカエナハーレ」が、差別的内容を理由に愛知芸術文化センターが使用許可取り消し
2020.9★安倍晋三首相が辞職。日本史上最長の首相在任記録に。菅義偉官房長官が首相就任
2020,10菅首相は日本学術会議の新会員について、推薦された候補者105人のうち6人を除外
2020.11元朝日新聞記者の植村隆が櫻井よしこらを名誉棄損で訴えた裁判が最高裁で棄却決定
2021新聞メディア撮影の五輪・聖火リレーの動画公開期間が走行後72時間以内というIOCの報道規定が問題視される
2021.1NHK『令和未来会議 どうする?何のため?今こそ問う東京五輪パラ』収録中止
2021.2★愛知県の大村秀章知事のリコール運動を巡る不正署名疑惑で県警が強制捜査に着手
2021.3元朝日記者の植村隆が文芸春秋などを名誉棄損で訴えた裁判が最高裁で棄却決定
2021.3「報道ステーション」のウェブCMの「ジェンダー平等をかかげるなんて時代遅れ」というセリフが問題視され、取り下げに
※本年表は、2015年「表現の不自由展」作成年表をもとに、新たに表現の不自由展実行委員会で作成。一部敬称略。

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